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2012年11月 5日 (月)

第31回かがくカフェ -万里長城を踏査して-報告

 11月3日、中国河北省張家口市郊外の万里長城付近で、東京の旅行会社のツアー参加者が遭難する事故がありました。9月29日のかがくカフェ「万里長城を踏査して」で、万里長城全部を歩いて来られた内海寛子先生のお話を聞いていたので、本格的な登山経験が必要な場所もある長城の様子が想像できました。

 万里長城を歩く会(福田久勝代表)は、1992年から2000年までの9年間、9次にわたり玉門関から山海関まで6000kmにわたる万里長城すべてを踏査しました。砂漠ではGPSを頼りに黄砂に埋もれた長城を探し、急峻な岩場に造られた長城をロッククライミングのように登り下る探検ともいえる踏査です。これは世界で初めて、前人未踏の踏査活動です。

 この壮大な踏査の講演をお聴きして圧倒される思いでした。ブログで報告するにあまりに膨大で、どう伝えていいか思案しているうちに今回の事故のニュースが入って来ました。

内海寛子著「万里長城 6000km、世界初踏査記 〈上〉〈下〉」草の根出版会を読み返してみると、下巻のp.4に1997年の張家口からの踏査が書かれていました。

「今年の長城は明代の長城としては最北端まで北上し、大馬群山(ダーマーチュンシャン)の標高2000mクラス級五座と、軍都山の1500m級の山々を走る長城。ついに沙漠・黄土高原とわかれ山岳長城となった。長城、崩れずに残っているものは石積が見事であるが、山中の石積長城は崩れ果てていることが多く、岩屑をぶちまけたようだ。

巨礫の竜(長城)は空に向かう時は踏み入れることを許すが、地に下るときはおそろしい。安息角(崩れる寸前の角度)をやっと保っており、一歩踏み崩すと竜は暴れそうだ。かつて長城であった岩石は鋭い角を容赦なく靴に食い込ませてくる。まるで人の踏み込むの拒否しているようだ。が、遠目には柔らかな緑の夏草に覆われた「緑の中の長城」で、周辺を彩る花はあざやかであった。たいへんきびしい行程が続いた。」

今回のツアーコースがこの記述と同じ場所かはわかりませんが、張家口からの長城は、夏でさえ大変厳しい山岳地帯であることがわかります。標高1500から2000mの高山ですから、この時期かなり気温が低いことも考えられます。冬山並の装備が必要ではないかと思われます。

観光地としての「万里の長城」は、観光地以外ではロッククライミングの技術が必要な岩場であったり、砂漠地帯ではGPSを頼りに砂嵐の中を進む、死と隣あわせの危険な行程をたどることを、講演で教えていただきました。そのわずか一月後、このような事故が起こるとは思いもしませんでした。

万里の長城、全行程を歩いて踏査された内海先生が書かれた本があります。

内海寛子著「万里長城 6000km、世界初踏査記 〈上〉〈下〉草の根出版会

現在、書店にはありませんが、残部がありますので、ご連絡いただければ、

上下セットを2000円+送料でお届けする事ができます。(定価 各2200円+税ですが)

faradaylab@nifty.com までご連絡ください。

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