第62回かがくカフェ 放射能のかがく(報告)
☆第62回かがくカフェ 放射能のかがく -放射能の人への影響と対策-
日時: 9月6日(日)午前10:00~12:00
場所: 東播磨生活創造センター「かこむ」
講師: 小若順一さん (「食品と暮らしの安全基金」代表)
http://tabemono.info/
参加者: 13人
「かこむ」にビラを置いてもらい、神戸新聞地域版、機関誌「食品と暮らしの安全基金」に案内記事を書いていただき、複数のメーリングリストでも案内しましたが、予想より大幅に参加者は少なかったです。はじめ200人規模の会場を探しましたがとれず、48人定員の加古川駅近くの「かこむ」を予約し、資料は50人分用意しました。埼玉から来ていただいたのに(前日大阪で講演されたのですが)、参加者が少なかったのは残念でした。
講演内容は「放射能の人への影響と対策」でした。チェルノブイリ原発事故による放射能汚染地域で、29年経過した現在、極低レベル汚染地域でも子どもたちに健康被害が出ていることを突き止め、放射能を抜いた食事で治して,因果関係を立証したという内容でした。
当日小若さんは4枚のカラー版別刷り資料を配布して説明されました。その内容は「食品と暮らしと安全」2015.4No.312 p.15~p.26に書かれているものでしたので、その見出しをここに書きご紹介します。
チェルノブイリ原発事故が起きたウクライナ・低線量・極低線量地域での調査
放射能汚染地域の健康調査 食事で回復させた!
第1回調査:2012年2月27日〜3月7日 孫世代への遺伝的調査
第2回調査:2012年5月27日〜6月5日 子どもの「痛み」の調査に切り替え
第3回調査:ツァー: 2012年9月24日〜10月4日 子どもの「痛み」の調査
第4回調査:2013年3月18日〜28日 放射能の人体影響の最低線量を調査
第5回調查:ツァ一:2014年3月15日〜24曰 化学肥料で痛みを減らす検証調査
食品の国際基準の1000分の1、日本の基準の100分の1ほどの、極微量のセシウム137 で、「痛み」が出ることを立証した調査を、どう進め、成果を挙げてきたのかを、総まとめとして報告します。
・孫世代の遺伝的影響から
・「痛み」の調査に転換
・70日の保養で、良くなり方が判明
・放射能を減らした食事で治す
・放射能の最低作用量を探す
・化学肥料で「痛み」が減った
・まっすぐ歩けたミーシャ
・木の灰から高濃度セシウム
・寝たきりから、伝い歩きできるように
・放射能汚染の少ない食事を
小若さんは1973年、日本消費者連盟の担当者として遺伝毒性がある合成殺菌料AF2の追放運動に関わって来られました。科学者ではありませんが、専門家として国際会議のパネルに呼ばれる知識と経験の豊富な方です。科学教育関係者ではないので、放射能に関する基礎知識が少ない方にとっては、わかりづらい部分があったようですので、補足しました。
・1Bq(ベクレル)/kg 食品1kgから1秒間に1発放射線が出る汚染量
日本の放射能基準は100Bq/kgだが、1.1Bq/kgでもヒトに頭痛が出ている(調査結果)
・放射能による筋肉痛について 筋肉にはカリウムK(原子番号19)が含まれています。セシウムCs(原子番号55)は周期表で同じ1族なので,体に取り込まると筋肉に集まりやすいのです。放射性のK40は天然カリウム中に0.0117 %しか存在しません。Csは普通土壌にほとんど存在しませんから、体に取り込まれるCsは原発事故や昔の核実験で方出されたCs137かCs134だといえます。土壌中のKとCsを植物が見分けられず取り込み、その植物を人間が食べ、含まれるKとCsを見分けられず体に取り込み、筋肉などに蓄積し、そこから出る放射線(β線)を受け続けることになります。
・なぜ化学肥料か 作物の肥料の三大要素は窒素、リン酸、カリです。カリウムは水溶性で流失しやすく不足しやすいのです。そこでセシウムがあると植物はカリウムと似たセシウムを吸収し、放射性のCs137が取り込まれ、食物に移行します。貧しいウクライナでは化学肥料が買えず、畑での生産が少ないので、森にあるやベリー類を多食しますが、これらは強い放射能を持ち、体に放射能がたまります。そこで、化学肥料を寄付し、ベリーやキノコを食べないようにする取り組みをし、健康被害を低減する成果があったというのです。
・Cs137 1Bqの影響 人体に取り込まれて筋肉にあるCs137原子は半減期30年でβ線という放射線を出してBa137になります。(ベータ崩壊といいます) 2個のCs137原子をみていたら30年の間にfどちらか一方がβ線を出して崩壊するということです。
30年は946080000秒なので1Bq(1秒に1発の放射線を出すためには、946080000×2 で約1.89×10の9乗個のCs137原子が必要です。Cs137は1モル137グラムですから、1モル6.02×10の23乗個で計算して約4.3×10-13グラムという微量になります。こんな微量でも、体内に1BqのCs137があると、細胞は毎秒1発のβ線を浴びます。このβ線は最大512keV(キロエレクトロンボルト)のエネルギーを持っています。β線の本体は電子で、この電子が51万ボルトの電圧で加速された莫大なエネルギーを持ってCs原子核から発射されるのです。周りの人体を作る細胞は主に、O:酸素 (65%),C:炭素 (18%),H:水素 (10%),N:窒素 (3%) などで構成される分子でできています。これらの分子の化学結合のエネルギーは最大5eVから7eVです。細胞を作る分子に51万eVのβ線が当たると、1発で10万個以上の分子の結合を切ってしまうことになります。DNAの結合も切れるので、細胞分裂や遺伝に異常が出る場合があるのです。細胞やDNAには修復機能もあるので、必ず異常が発生するのではありませんが、確率的には1Bqの放射能でも影響はあるのです。
(参考文献 崎山比早子(高木学校)、雑誌「理科教室」、、2015.3P.41、日本標準)
ファラデーラボを運営する かがく教育研究所の目的は、「普通の人々が科学的に考えて行動することができるための教育課程の研究と構築」です。
この補足説明を書いていて、放射能問題を扱うと、内容が格段に難しくなると思いました。それは、放射線のもつエネルギーが化学結合のエネルギーに対して10万倍から100万倍も高いということから来ると思います。日常生活にこのような高い危険なエネルギーを持つ物質を持ち込んではならないのです。
外部放射線による実効線量が、3月間につき1.3mSVを超えるおそれのある区域は、放射線管理区域になり、飲食も禁止されています。12ヶ月で1.3×4=5.2mSVになります。
2014年12月、年間の積算線量が20mSv以下となることが確実であるとして、南相馬市における特定避難勧奨地点について、解除すると通知しましたが、放射線管理区域の4倍近くも放射線量がある場所で飲食して日々暮らしてもいいということになります。
シーベルト[Sv]は人体の被曝線量を表す線量概念の一つで、線量当量の単位です。
普通関西では空間線量率0.06μSv/hくらいですが(場所により変わりますが)これは1時間あたりなので、1年=365日×24時間=8760時間 をかけて0.06×8760μSv=526.6μSv=0.526mSv/年 です。20mSvの大きさがわかります。
20mSvは、8760で割って2.28μSv/hですが、ガイガーカウンターではかると警告音が連続し針がかなり振れる線量です。
普通の(専門家でない)人が科学的の考えて行動するために、どのようなことが必要か、今回のかがくカフェではあらためて大きな課題をいただいたように思います。
« 第62回かがくカフェ 放射能のかがく | トップページ | 第63回かがくカフェ「蛍光タンパク質のかがく」 »
コメント